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及川 健一; 高田 弘; 前川 藤夫; 原田 正英; 甲斐 哲也; 酒井 健二; 二川 正敏; 池田 裕二郎
no journal, ,
J-PARCプロジェクトの主要施設である1MW出力のパルス核破砕中性子源(JSNS)の中性子ビームシャッターシステムは、ほかの大強度パルス核破砕中性子施設、例えば英国ISIS(160kW)や米国SNS(定格1.4MW)にはない、「全ビームラインが完全に独立なシャッターブロック・駆動機構を備える」という条件でSNSと同等の23本のビームラインを可能としたことが大きな特徴である。コンパクトなボールスクリュージャッキ駆動方式の選定により、ポイズンドモデレータ用ビームラインにおける最小間隔(6.7)の狭隘な空間への機器配置を可能にし、かつ隣接する機器と独立な交換作業性を確保したこと、2本シャフト懸垂時にシャッター内挿入物の形状を考慮した重心位置の確保等、設計上の注意を払った。これまでに、オフビームで駆動から交換作業まで一連の試験を行い、設計の妥当性を確認した。
甲斐 哲也; 加美山 隆*; 平賀 富士夫*; 広田 克也*; 大井 元貴; 前川 藤夫; 加藤 崇; 鬼柳 善明*
no journal, ,
北大電子ライナックを用いて、J-PARCと同寸法の結合型パラ水素モデレータについて、中性子強度の空間分布とパルス形状を測定した。設計計算によると、モデレータ表面上における冷熱中性子強度の空間分布は、垂直方向では、プリモデレータに近い上下端部で強度が大きくなり、中央へ向かって減少する。また、水平方向では平坦な分布となる。実験では、カドミウム板に設けたピンホールを通して、2次元位置敏感型検出器を用いてモデレータからの中性子を観測することにより、モデレータ表面上の冷熱中性子強度の空間分布を測定した。得られた結果から、設計計算は実験と矛盾していないことがわかった。パルス特性は、マイカ結晶によってブラッグ反射された中性子を検出することによって測定した。比較の結果、実験データは計算の結果を支持するものであった。以上の結果より、J-PARC結合型モデレータの設計が妥当であると判断できる。
丸山 龍治; 山崎 大; 海老沢 徹*; 曽山 和彦
no journal, ,
曲面ミラーによって中性子ビームを集光する際には、スーパーミラーでの反射における散漫散乱が問題となるが、NiC/Tiスーパーミラーからの散漫散乱強度はNi/Tiのそれよりも1桁以上小さく、集光素子への応用に適していることがわかった。層厚及び層数の異なるNi/Ti, NiC/Ti多層膜ミラーに対して中性子散漫散乱測定を行ったところ、Bragg条件を満たさない領域での散漫散乱強度に1桁程度の差が生じるという結果が得られた。これは、NiC/Ti多層膜では、界面の面間の相関長がNi/Tiのそれよりも大きく、各々の界面からの散漫散乱成分がBragg条件を満たさない場合に弱め合うためである。本発表では、上記スーパーミラーの性能,Ni/Ti及びNiC/Ti多層膜の散漫散乱測定結果、さらにNiC/Ti多層膜導入によって散漫散乱が抑えられるメカニズムについて議論する。
飯久保 智; 樹神 克明; 竹中 康司*; 高木 英典*; 社本 真一
no journal, ,
MnCuGeNのx0.5では、室温付近の広い温度範囲で負の熱膨張率が観測される。この熱膨張率の絶対値はこれまで報告されたものの中で最も大きいことから、熱膨張抑制剤として広く注目を集めている。負の熱膨張の起源となっているのは、磁気秩序の消滅に伴う体積収縮、いわゆる磁気体積効果である。われわれはこの系のx0.15で劇的に現れる大きな磁気体積効果が、磁気構造の変化と対応していることを明らかにした。系が示す型の反強磁性秩序は磁気体積効果と強く結びついていると考えられ、磁気モーメントの長さのみが考慮されていた従来の解釈からは単純には理解することができない。つぎにGe濃度の増加とともに起こる磁気体積効果のブロードニングを引き起こす要因を明らかにする目的で、Geが引き起こす局所構造に着目して調べた。パルス中性子回折パターンを規格化し、フーリエ変換して原子対相関関数を得たところ、その短距離領域には平均の構造解析から導かれる立方対称性が、局所的に破れていることを示唆するピークの分裂が観測された。これはMnN八面体がc軸周りで回転した構造として理解される。この構造はMnGeNの低温正方晶の構造で、それがドメインを形成していると考えられる。Ge濃度の増加に伴い、この回転角は増加する傾向を示しており、鋭い一次転移の磁気体積効果を示すMnGaNではこの回転角が小さい。このことから八面体の回転がブロードな磁気相転移に重要な役割を持っていると考えられる。
高橋 伸明; 柴田 薫; 佐藤 卓*; 川北 至信*; 中島 健次; 新井 正敏; Mamontov, E.*
no journal, ,
J-PARC/MLFに設置が計画されている逆転配置型分光器(DNA)は、PG, Ge, Siの3種類のアナライザーを走査する-空間によって選択できるよう設計されている。この中でSiアナライザーは2から3eVのエネルギー分解能を達成することが期待されており、そのためには高度な分光原理に基づいた装置設計が必要となる。最近SNSに建設されたSiアナライザー型分光器(BASIS)は、以下に示すような分光原理に従って高エネルギー分解能を達成している。Siアナライザーは、試料直上(及び直下)の点を中心とする半径の球面形状を有する。このとき与えるべき装置パラメータは、球の中心の座標,半径,検出器の座標である。試料(点)において仰角で散乱された中性子は、アナライザー(点)において波長の中性子が角度2でBragg反射され、検出器(点)へ時刻に到達する。このとき、変数と検出器の座標は仰角の関数として表現できる。したがって、位置敏感型検出器(PSD)を用い、各ピクセルにおいて検出されるTOFスペクトルにそれぞれ補正を行い足し合わせることにより、1本の非弾性スペクトルを得ることが理論上可能である。われわれは、分光器パラメータの最適化を目的に、この分光原理を定式化し、その特徴を明らかにしたので報告する。
熊田 高之; 能田 洋平; 橋本 竹治; 小泉 智
no journal, ,
原子力機構JRR-3付属中性子小角散乱装置(SANS-J-II)に組合せる、動的核スピン偏極(DNP)装置を開発した。装置は超電導マグネット(3.3Tesla),半導体製ミリ波発振器(ガンダイオード94GHz)に、Heを用いた冷却システム(1K)により構成された小ささ(直径60cm、高さ1m)と、トップローディングによる試料交換を可能にするなどの、小角散乱実験の実情に即した扱いやすさを優先した仕様とした。現在までに、ポリエチレン試料を用いて最高63 percentの偏極を達成している。これは、1K環境下におけるこれまでの値(3040%)を既に上回るものである。また、SANS実験から、同試料中における、水素原子核による非干渉性散乱、及び結晶構造に由来する信号に、偏極による強度変化を観測することに成功している。今後、部分重水素置換によるコントラスト変調の難しい試料の測定,重水素置換・スピンコントラスト変調双方を用いた複雑物質の構造決定などに、本装置を活躍させていきたい。
深澤 裕
no journal, ,
冥王星は直径二千キロの表面から内部まで氷の詰まった塊で、アンモニア,メタン,ヘリウム,炭素等を含んでいる。現在、中性子回折の実験から、不純物を含有させた氷の構造を広い温度・圧力範囲で調べている。従来の氷研究では、低温高圧下ではアモルファス状態で、それを常圧に戻しても結晶に変化しないとされているが、オークリッジで実施の実験で、冥王星表面と同じ温度において、不純物含有のアモルファス氷が結晶化して強誘電体になる過程が見いだされた。この現象はさらなる調査が必要だが、内部から溶岩のように噴出した冥王星表面の氷が結晶であるとの最新の観測結果と一致するもので、注目している。
菊地 隆之; 奥 隆之; 篠原 武尚; 鈴木 淳市; 石井 佑弥; 武田 全康; 加倉井 和久; 佐々木 勇治*; 岸本 幹雄*; 横山 淳*; et al.
no journal, ,
FeNを主成分とする球状Fe-N磁性微粒子は優れた磁気記録特性を示すことから、テープ状磁気記憶媒体の新材料として注目されている。Fe-N微粒子の表面は酸化防止のための非磁性ラミネート層で覆われているため磁化に寄与する部分の体積を精度よく求めることが困難であり、巨視的な磁化測定からFe一原子あたりの磁気モーメントの絶対値を評価することはできない。そこでわれわれは、偏極中性子回折実験により微粒子の主成分であるFeNのFe一原子あたりの磁気モーメントを評価するとともに、本研究では作成条件の異なる数種類のFe-N微粒子について、その内部磁気構造を評価することを目的として、偏極中性子小角散乱実験を行った。実験には、原子力機構の偏極中性子集光型小角散乱装置(SANS-J-II)を用いた。試料に1Tの磁場を印加し、入射中性子のスピン極性がそれぞれ正極性及び負極性の場合の中性子小角散乱強度I及びIを測定した。得られた散乱データをコアシェル構造をとる球状粒子モデルを用いて解析し、Fe-N微粒子の表面非磁性層の厚み及び磁性領域の平均体積を求めた。その結果、Fe-N微粒子の内部磁気構造を定量的に評価することができた。
中川 洋; 片岡 幹雄
no journal, ,
蛋白質の動力学転移がなぜ水和で生じるのかを明らかにすることを目的とし、非干渉性中性子非弾性散乱と分子シミュレーションによって動力学転移における水和水の構造やダイナミクスを調べた結果を報告する。まず蛋白質の水和量を段階的に変えることで動力学転移が水和量に応じてどのように変化するかを調べた。その結果、水和量が約0.3(g water/g protein)以上で動力学転移が顕著に現れることがわかった。なぜ動力学転移がこのような水和依存性を示すのかを明らかにするために、中性子散乱の同位体効果を利用して水和水のダイナミクスを直接観測した。その結果、転移温度以下の低温では水和量に関係なくタンパク質と水分子の揺らぎの大きさはほぼ同じであった。また転移が生じない低い水和量の場合では転移温度以上でもやはりタンパク質とほぼ同じであった。一方、動力学転移が生じる高い水和量の場合には転移と同時に水和水の揺らぎが大きくなっていることが明らかになった。蛋白質表面の水和水の構造的な考察から、約0.3(g water/g protein)の水和量を超えると水和水間の接触が顕著になる(水和水のパーコレーション転移)と考えられた。分子シミュレーションによって蛋白質水和水の構造をさまざまな水和量で調べた結果、高い水和量では水和水間の水素結合ネットワークが蛋白質表面を取り囲んでいることが観測された。以上の結果から、蛋白質の動力学転移は水和水のパーコレーション転移と密接な関係があるといえる。
井川 直樹; 田口 富嗣; 深澤 裕; 山内 宏樹; 石井 慶信*; 内海 渉
no journal, ,
炭酸ガス及びキセノンガスハイドレートにおける氷の作るネットワーク状中のガス分子の挙動を10Kからハイドレートの分解温度直下までの温度範囲でHRPDを用いて粉末中性子回折実験を実施した。得られた回折データをRietveld解析し、その後マキシマムエントロピー法で原子核密度分布を求めた。炭酸ガスハイドレートは12面体中では炭酸ガスが炭素原子を中心に一様に回転している。一方、14面体中では炭酸ガスは炭素原子を中心に14面体を構成する互いの六員環中心を結ぶ線を回転軸とし、かつ、酸素原子間を結ぶ線が回転軸と直角をなすように回転をしている。発表ではこれらハイドレート中のガス分子挙動の温度依存性をメタンハイドレートのそれと比較しながら報告する。
柴田 薫; 高橋 伸明; 佐藤 卓*; 川北 至信*; 筑紫 格*; 中川 洋; 藤原 悟; 中島 健次; 新井 正敏
no journal, ,
JAEAがJ-PARC物質・生命科学実験施設MLF中性子源の結合型ビームラインBL02に設置することを計画している逆転配置型分光器(DNA)は線源から試料位置までの飛行距離を約42mとり、PG002, Ge311, Si111の3種類の集光型結晶アナライザーを使用し、広いQ-E空間を高エネルギー分解能大強度で微少試料の中性子非弾性散乱実験を実施可能な測定装置として計画中である。今後、実際の装置建設計画を検討するにあたり、建設の容易さ,コストの低減を考慮した装置各部分の詳細検討を実施中である。本報告では最新の検討結果を報告する。本体真空槽に関して、3種類の集光型結晶アナライザーを経済的・効率的に配置するためビームライン軸上に上流・下流部分に2種類の真空槽に分割設置する案を現在検討中である。結晶アナライザーの配置方式に関して、上流真空槽に設置するPG002, Ge311については結晶配置ミラー面の設計・加工方法の検討を実施中である。また、下流部真空槽に設置するSi111については結晶配置ミラー面に半径2mの球面の一部を使用して低コストで高分解能の分光配置を実現する検討を行っている。その他、アナライザー結晶のモザイク制御方法等の検討結果について報告予定である。
能田 洋平; 熊田 高之; 小泉 智; 橋本 竹治
no journal, ,
有機ラジカル(TEMPO: 2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl)をドープした高分子試料(ポリエチレン)について、動的核スピン偏極法(3.3Tesla, 1.4Kにおいてミリ波(94GHz)を照射)によって試料中の水素原子核のスピンを偏極させた。この試料に偏極中性子超小角散乱装置(SANS-J-II)において偏極中性子を照射し、干渉性.非干渉性小角散乱について偏極解析を行った。結晶化度の低い試料ではNMRによる評価では偏極度43%を達成したが、対応して偏極小角散乱においても非干渉性散乱の増減が定量的に観測された。また結晶化度の高い試料では偏極度26%を達成し、対応して干渉性小角散乱の増大が確認できた。両結果とも動的核スピン偏極法によって高分子試料内部の水素核の散乱長が変化したことを支持するものである。
奥 隆之; 篠原 武尚; 菊池 隆之; 大場 洋次郎; 岩瀬 裕希; 小泉 智; 鈴木 淳市; 清水 裕彦
no journal, ,
偏極中性子は、磁性材料等の物質の構造研究において、非常に有力なプローブである。しかし、偏極中性子を発生させるための磁気ミラー等の既存の偏極子は、すべて中性子と物質との相互作用を利用するものであり、物質固有の性質等に基づく中性子の吸収や散乱による中性子の利用効率の低下は否めない。しかし、中性子と物質との相互作用を用いることなく、中性子の磁気モーメントと磁場との相互作用のみを利用して中性子を偏極させ、さらに集光することができれば、偏極中性子を損失なく発生させ、かつ効率よく用いた実験が可能になると期待できる。最近のわれわれの研究の結果、四極磁場は偏極中性子を発生させるための磁場分布として、最も適していることがわかった。また、六極磁場は偏極中性子に対して理想的な集光レンズとして機能することが知られている。そこで、われわれは四極磁石を用いて偏極させた中性子を六極磁石で集光する中性子偏極・集光システムを構築し、冷中性子の偏極・集光実験を行った。その結果、四極磁石を用いて、偏極度P0.99の超高偏極中性子を発生させ、さらに、その偏極中性子を六極磁石を用いて、約10mの焦点距離で集光させることに成功した。
元川 竜平; 小泉 智; 橋本 竹治; 飯田 優羽*
no journal, ,
リビングラジカル重合法によりポリメタクリル酸メチルとポリスチレンで構成されるジブロック共重合体を合成した。この重合溶液について中性子超小角・小角散乱法によるその場観察を行った結果、均一溶液下でのジブロック共重合体の成長、及び、重合の生成物に誘起される相分離構造の出現を小角散乱の時間変化として追跡することに成功した。その際、相分離構造のモルフォロジーとサイズの経時変化を反映して構造色が発現することを明らかにした。また、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いた分析により本重合挙動を詳細に調べたところ、相分離構造の出現は重合反応速度の遅延を普遍的に引き起こす可能性があることを実験的に初めて見いだすことに成功したので、この結果について報告する。
二川 正敏
no journal, ,
J-PARC物質・生命科学実験施設におけるJSNSパルス中性子源からの中性子初生は、2008年5月を予定している。その後、陽子ビームの増強を数年掛けて行い、1MW出力時には、先行しているSNSの1.4MW時のパルス中性子性能を凌ぐものと期待される。SNSとJSNSではともに核破砕標的として液体水銀を用いる。これは、標的である水銀自身の照射劣化を無視できること,冷却材としての機能を水銀に持たせることができること、などの理由による。しかしながら、大強度の陽子ビーム入射時には、水銀内部に核破砕反応に伴う熱衝撃による圧力波が発生し、容器は急激に押し広げられる。このとき、容器と水銀の接液界面近傍ではキャビテーションが生じ、それによる損傷が容器寿命を著しく低下させることが明らかになった。本講演では、当該課題に対して、SNSとの国際協力を含め、これまでに実施した技術開発の現状と今後の計画について紹介する。
岩瀬 裕希; 小泉 智; 橋本 竹治; 八巻 徹也; 澤田 真一; 前川 康成
no journal, ,
量子ビームを活用した架橋・重合プロセスにより、燃料電池膜として作製された架橋ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)電解質膜の作製プロセスにおける構造変化及び膨潤状態の構造について、中性子小角散乱法で測定した結果を報告する。本研究では架橋PTFE電解質膜の高いプロトン伝導性の起源を明らかにするために、この膜内に存在してプロトン伝導特性を担うイオンチャンネルの構造をコントラストバリエーション法を活用して選択的に観察することを試みた。これによりイオン交換容量が増加すると、プロトン伝導度は比例して増加するが、イオンチャンネル構造は棒状からネットワーク状に変化することを見いだした。さらに架橋PTFE電解質膜への作製過程、すなわちPTFEの放射線架橋,スチレンのグラフト重合、及びスルホン化のそれぞれの過程で得られた試料について観察し、イオンチャンネルのサイズは放射線架橋プロセスと密接に関係していることを明らかにした。
栗原 和男; 安達 基泰; 玉田 太郎; 大原 高志; 黒木 良太
no journal, ,
生体高分子用中性子回折装置BIX-3, 4(原子力機構JRR-3)を用い、タンパク質やDNAにおける水素・水和構造と機能の解明を進めている。2007年度は、タンパク質及び低分子に対し施設共用課題(3件),中性子利用技術移転推進プログラム課題(2件),独自研究課題(1件)の中性子回折データセットの収集に成功し、現在(2007年11月)、1件のデータセットを測定中である。独自研究課題では、ADP-リボースピロホスファターゼの中性子回折データを測定した。マクロシーディング手法を用い11mmもの大型結晶を育成し、2.1分解能の回折データを取得に成功した。また、ヒト免疫不全ウイルスプロテアーゼを現在測定中である。大型結晶の育成は創晶により行われた。現在、2.3分解能の回折データが得られており、本年中にデータセット取得を完了する予定である。これまでの回折実験結果から、結晶体積,単位胞体積及び回折分解能間の経験的関係をまとめた。この関係から、BIX-3, 4の中性子回折実験で、与えられた結晶サイズと格子定数に対して測定結果を予測することができる。
Harjo, S.; 盛合 敦; 鈴谷 賢太郎; 相澤 一也; 中井 徹志*; 白木原 香織*; 高田 慎一; 森井 幸生; 新井 正敏; 友田 陽*; et al.
no journal, ,
J-PARCにおいて、物体内のひずみ又は応力の評価,変形及び熱的なプロセス中の構造変化の評価,製造過程及び使用中のその場測定や集合組織解析等のような材料工学分野の研究や産業利用を推進するため、原子力機構では、工学材料回折装置「匠」を整備している。匠は測定精度(分解能)に関しては同種の装置の中で一番優れており、測定効率に関してはSNS-VULCANと同程度である。匠はMLF/J-PARCのday one装置の一台であり、平成18年度から3年間の予算で建設が行われている。現在、建設中段にあり、匠用の増築建屋がほぼ完成しており、11月中旬に仮竣工予定である。ビームライン遮蔽体の一部はMLF第2実験ホール内に既に据付されており、増築建屋の仮竣工後に、残りのビームライン遮蔽体,分光器遮蔽体,主実験機器の試料テーブル,検出器やガイド管などの据付が予定されている。われわれは、匠の第一期構成機器の据付やソフトウェアプロトタイプのインストールを平成20年4月中までに完了し、平成20年5月のファーストビームに時期をあわせてコミッショニングがスタートできることを目指す。本発表では匠の設計性能,建設状況及びソフトウェア概念について報告する。
篠原 武尚; 高田 慎一; 鈴木 淳市; 奥 隆之; 鈴谷 賢太郎; 相澤 一也; 大友 季哉*; 杉山 正明*; 新井 正敏
no journal, ,
J-PARCの物質・生命科学研究施設に設置計画中のパルス中性子小中角散乱装置であるHI-SANSは、q=1050 という原子炉型の中性子小角散乱装置と比較して格段に広いq領域の測定を可能とし、短波長中性子の利用により高いq領域の測定効率が高いという特徴を持つ。これにより、ナノメーターサイズの物質の構造や、それらが作る階層構造の評価を一挙に行い、ナノ構造体が持つ特性や機能の起源を理解することを目指している。現在、HI-SANSの実現に向けて、McStasとPHITSを用いたモンテカルロシミュレーションにより光学系設計及び遮蔽性能評価を行っている。HI-SANSの上流光学系には、一般的なピンホール型コリメーション機構に加えて、偏極素子,集束スリット,中性子レンズの搭載を予定している。遮蔽設計としては、分光器外部への放射線の漏出を評価するだけでなく、分光器室内部においても低バックグランドでの測定を実現するための検討を進めている。学会では、光学系設計に関する状況及び、遮蔽性能とバックグランドノイズに関する検討結果について報告する。
山口 大輔; 眞山 博幸*; 小泉 智; 辻井 薫*; 橋本 竹治
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アルキルケテンダイマーをテンプレートに用い、ゾル-ゲル法により作製したシリカ多孔体の構造を、ナノメートルから10マイクロメートルのスケールに渡り、超小角中性子散乱法を用いて観察し、解析した結果について発表を行う。アルキルケテンダイマーはワックスの1種であり、結晶化によって自発的にフラクタル表面構造を形成するという特長を有する。この特長を利用して、3次元(立体)的なフラクタル構造を形成したアルキルケテンダイマーの凝集体構造を孔の形状に転写させることにより試料となる多孔体を得た。この試料から得られた散乱を解析することにより、本研究で見いだされたフラクタル構造は、従来のシリカ多孔体構造の代表例であるエアロジェルのフラクタル構造より1桁以上大きなスケール(10マイクロメートル)までフラクタル性が成り立つことを明らかにした。一方、散乱のべき乗指数によって示されるフラクタル次元に関しては、エアロジェルと本測定試料との間に顕著な違いは見られなかった。このことは、両系における自己相似構造自体には類似性が存在することを示唆するものと考えられる。